本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
Posted by まめやもり - mameyamori - 2007.12.21,Fri
なんか旅行記アップがいちじるしく遅れているので、とりあえず書いた分だけアップ。しかしポンペイがこれで三回にわかれてしまった。いつ終わるんだイタリア旅行記。
さて、前回書いたような感じでふらふらと見どころエリアを歩いていると、観光客の団体さんがきまって足を止め、ガイドさんの説明を聞いている場所がある。団体にまみれると色々と見るのが大変なので(おしあいへしあいになる)できるだけズレたり避けるようにしていたのだが、ある場所があまりにも人気らしいので、ついて行ってみることにした。
赤と黄色のフレスコ画が色鮮やかに残る壁と屋根の下に、ガラスケース。そのまわりに人だかりができており、ガイドさんが声を張り上げて英語で説明している。「この人は身長が当時のローマ人の身長より明らかに高い。おそらく北アフリカから連れてこられ、奴隷として使役されていた人だと思われます……」どうやら、ポンペイの都とともに灰の下に生き埋めになった(あるいは火山の有毒ガスで死亡した)人の死体から、型を取ってつくった石膏型らしい。よく見ると、足から骨が突き出ていたり、口の中に歯が見えたりしている。あまりにリアルなその様子にぽかんと口をあけて見入っていると、先ほどの団体さんが去ってまた次のが来た。今度は日本から来たご一行らしい。ガイドさんはイタリアの方と見えたが、非常に流暢な日本語で似たような説明をしている。「はい、この人は男性の奴隷ですね。はい、胴体のあたりをご覧くださいね、ベルトの跡があるのがおわかりでしょうか、はいそうなんですね、これが奴隷のしるしなわけで……」若い美人のガイドさんだったが、なんでか喋り方が異様にジジババくさい。
ポンペイには、ヴェスヴィオ火山爆発とともに命を落とした人々の、こうした石膏型がいくつもあるのだが、これらはどうやら18世紀半ばに発掘が始まったときに作られたものであるらしい。灰が死体を取り込んで固まった跡、中の死体が腐って、硬い岩の型だけを残して空洞状になる。その空洞に発掘時に石膏を流し込んで固め、死体の型をとるという行程を通じてできたものらしい。しゃがみこんだ人、苦しんで胸をかきむしっている人にはじまり、体を歪めて断末魔の叫びをあげている犬など、人間はおろか動物の石膏型まであるのだ。しかし、前回紹介したモザイク画にもあったけど、犬ってのはほんとうに古くから飼われていたんだなあ。まあ2000年前だったら当然という感じなのだろうか。石器時代から飼ってたとかいうしね。
ちなみにポンペイは現在も(生きた)犬だらけである。観光客から弁当のおこぼれなどをもらって暮らしているのか、あちこちにゴロゴロ伸びて日光浴をしている。非常にふてぶてしい。しかも大型犬ばかり。
さて、また少し歩いて見所のひとつである公衆浴場にさしかかったところで、デジタルカメラが突然ピーと音を立てた。見ればメッセージが出ている。「電池が消耗しています。交換してください」
やべ!替えの電池持ってこなかったよ!せっかく日本から来た友達に量販店で買いだめして貰ってきたのに!はるばる日本から持ってきてくれたのに全部ナポリのホテルに置いてきちまった……
青ざめつつ電池売り場を探すが、どこにも見つからない。ポンペイ内で唯一のレストランには本屋が附属しているが、売っているのはどれもポンペイ本ばかり、「電池はありますか」と聞いても「無い。ポンペイの遺跡の中には電池は売っていない」との答え……
意を決して、一度外に出て電池を買うことができるかどうか、確かめてみることにする。入り口ゲートまで戻り、改札をしていたゲートの兄ちゃんに、「電池が切れた。どうしても写真を撮りたい。すぐに戻ってくるから、もう一度入場料を払わずに入れてもらえないだろうか」の旨、哀れっぽくしつこく訴えかける(ちなみにわたしはイタリア語ができないので英語で。つくづく迷惑な客である)。兄ちゃんは肩をすくめて鼻をほじりつつ「仕方ないね。いいよ」の答え(じっさいは鼻ほじっていなかった気がするが、ほじっていても違和感ない感じの面倒くさげな様子だった)。やったやった!聞いてみるもんである。
そそくさと遺跡を離れて、ヴェスヴィオ周遊鉄道ポンペイ駅のキヨスクで単三電池を買った。四本入りで4〜5ユーロほど。量販店に比べれば馬鹿高いが、まあイギリスで普通に買ってもこんなもんである。
ついでに、チケット売り場でトイレにも入っておいた。なんと、ポンペイには遺跡の中にトイレが無いのだ。みなさん、見学を始める前にぜひトイレに入っておいてくださいね。しかし、まともに見れば軽く一日かかる規模の遺跡に、トイレが一個もないっていったいどういうことなんじゃ。
一時はどうなることか、せっかく絶好の観光日よりに世界遺産に来ていて、これ以上写真なしかと思ったが、ともあれ無事に電池も手に入り、終わりよければすべてよし、気を取り直して見学を始める。公衆浴場を覗いた後、かつて工房だったというあたりをぶらぶらする。工房には壷だの花瓶だのが数百数千の規模で無造作にゴチャゴチャ所狭しと並んでいて、その一つ一つは貴重なローマ時代の遺品にちがいないのだろうが、どう見てもジャンクな失敗作を倉庫に詰め込んでいるようにしか見えない。
古代ローマというと、きわめて写実的で、肉体美を極めた人物彫刻の絶頂期のような気がしていたが、上のようにプリミティブというか古代神話っぽい感じの彫刻も出土しているようだ。なんだか中世芸術っぽいなあ。こうして見ると、やっぱり中世って、ローマより以前に「返ちゃった」みたいな文化なのねえ。
少し中心街エリアをうろうろした後、チタマに「やや離れた場所にあるが大変重要な見所スポット。見過ごすな!」と書いてあったとかいう「秘儀荘」に向かうことにする。秘儀荘って、なんだかミステリアスでセクシーな響き……もしかしてポンペイ名物の、あのエロチック画像とかがたくさん収められている館なのかしら……
などと、あまり純粋無垢でない期待を抱えつつ、秘儀荘に向かう道に足を踏み出すところで、本日はここまで。
さて、前回書いたような感じでふらふらと見どころエリアを歩いていると、観光客の団体さんがきまって足を止め、ガイドさんの説明を聞いている場所がある。団体にまみれると色々と見るのが大変なので(おしあいへしあいになる)できるだけズレたり避けるようにしていたのだが、ある場所があまりにも人気らしいので、ついて行ってみることにした。
赤と黄色のフレスコ画が色鮮やかに残る壁と屋根の下に、ガラスケース。そのまわりに人だかりができており、ガイドさんが声を張り上げて英語で説明している。「この人は身長が当時のローマ人の身長より明らかに高い。おそらく北アフリカから連れてこられ、奴隷として使役されていた人だと思われます……」どうやら、ポンペイの都とともに灰の下に生き埋めになった(あるいは火山の有毒ガスで死亡した)人の死体から、型を取ってつくった石膏型らしい。よく見ると、足から骨が突き出ていたり、口の中に歯が見えたりしている。あまりにリアルなその様子にぽかんと口をあけて見入っていると、先ほどの団体さんが去ってまた次のが来た。今度は日本から来たご一行らしい。ガイドさんはイタリアの方と見えたが、非常に流暢な日本語で似たような説明をしている。「はい、この人は男性の奴隷ですね。はい、胴体のあたりをご覧くださいね、ベルトの跡があるのがおわかりでしょうか、はいそうなんですね、これが奴隷のしるしなわけで……」若い美人のガイドさんだったが、なんでか喋り方が異様にジジババくさい。
ポンペイには、ヴェスヴィオ火山爆発とともに命を落とした人々の、こうした石膏型がいくつもあるのだが、これらはどうやら18世紀半ばに発掘が始まったときに作られたものであるらしい。灰が死体を取り込んで固まった跡、中の死体が腐って、硬い岩の型だけを残して空洞状になる。その空洞に発掘時に石膏を流し込んで固め、死体の型をとるという行程を通じてできたものらしい。しゃがみこんだ人、苦しんで胸をかきむしっている人にはじまり、体を歪めて断末魔の叫びをあげている犬など、人間はおろか動物の石膏型まであるのだ。しかし、前回紹介したモザイク画にもあったけど、犬ってのはほんとうに古くから飼われていたんだなあ。まあ2000年前だったら当然という感じなのだろうか。石器時代から飼ってたとかいうしね。
ちなみにポンペイは現在も(生きた)犬だらけである。観光客から弁当のおこぼれなどをもらって暮らしているのか、あちこちにゴロゴロ伸びて日光浴をしている。非常にふてぶてしい。しかも大型犬ばかり。
さて、また少し歩いて見所のひとつである公衆浴場にさしかかったところで、デジタルカメラが突然ピーと音を立てた。見ればメッセージが出ている。「電池が消耗しています。交換してください」
やべ!替えの電池持ってこなかったよ!せっかく日本から来た友達に量販店で買いだめして貰ってきたのに!はるばる日本から持ってきてくれたのに全部ナポリのホテルに置いてきちまった……
青ざめつつ電池売り場を探すが、どこにも見つからない。ポンペイ内で唯一のレストランには本屋が附属しているが、売っているのはどれもポンペイ本ばかり、「電池はありますか」と聞いても「無い。ポンペイの遺跡の中には電池は売っていない」との答え……
意を決して、一度外に出て電池を買うことができるかどうか、確かめてみることにする。入り口ゲートまで戻り、改札をしていたゲートの兄ちゃんに、「電池が切れた。どうしても写真を撮りたい。すぐに戻ってくるから、もう一度入場料を払わずに入れてもらえないだろうか」の旨、哀れっぽくしつこく訴えかける(ちなみにわたしはイタリア語ができないので英語で。つくづく迷惑な客である)。兄ちゃんは肩をすくめて鼻をほじりつつ「仕方ないね。いいよ」の答え(じっさいは鼻ほじっていなかった気がするが、ほじっていても違和感ない感じの面倒くさげな様子だった)。やったやった!聞いてみるもんである。
そそくさと遺跡を離れて、ヴェスヴィオ周遊鉄道ポンペイ駅のキヨスクで単三電池を買った。四本入りで4〜5ユーロほど。量販店に比べれば馬鹿高いが、まあイギリスで普通に買ってもこんなもんである。
ついでに、チケット売り場でトイレにも入っておいた。なんと、ポンペイには遺跡の中にトイレが無いのだ。みなさん、見学を始める前にぜひトイレに入っておいてくださいね。しかし、まともに見れば軽く一日かかる規模の遺跡に、トイレが一個もないっていったいどういうことなんじゃ。
一時はどうなることか、せっかく絶好の観光日よりに世界遺産に来ていて、これ以上写真なしかと思ったが、ともあれ無事に電池も手に入り、終わりよければすべてよし、気を取り直して見学を始める。公衆浴場を覗いた後、かつて工房だったというあたりをぶらぶらする。工房には壷だの花瓶だのが数百数千の規模で無造作にゴチャゴチャ所狭しと並んでいて、その一つ一つは貴重なローマ時代の遺品にちがいないのだろうが、どう見てもジャンクな失敗作を倉庫に詰め込んでいるようにしか見えない。
古代ローマというと、きわめて写実的で、肉体美を極めた人物彫刻の絶頂期のような気がしていたが、上のようにプリミティブというか古代神話っぽい感じの彫刻も出土しているようだ。なんだか中世芸術っぽいなあ。こうして見ると、やっぱり中世って、ローマより以前に「返ちゃった」みたいな文化なのねえ。
少し中心街エリアをうろうろした後、チタマに「やや離れた場所にあるが大変重要な見所スポット。見過ごすな!」と書いてあったとかいう「秘儀荘」に向かうことにする。秘儀荘って、なんだかミステリアスでセクシーな響き……もしかしてポンペイ名物の、あのエロチック画像とかがたくさん収められている館なのかしら……
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時折超つたない英語を喋りますが修行中なのでどうかお許しください。
A tiny lazy gecko (=yamori) always mumbling something
Please excuse my poor English -- I am still under training
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