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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2006.08.18,Fri
もう二ヶ月ほども前に、友人がHP日記で「皆さん「キライな本」ってどんなのがあります?」って質問をしてた。
ちょっと面白そうだ、ブログで書こうかなと思って考えてみたのだけれど、・・・それがなかなか思いつかない。さすがに読んだ小説すべて素晴らしいなどと思ってきたはずはないので、絶対にあるはずなのだけど・・・しかし意外と難しい。あんまり印象に残らない作品は多々あれど、「嫌い!嫌い!嫌い!嫌い!ああああ!」と叫びたくなる小説というのは少ないものなのか・・・あるいは単に忘れてるだけなのか。

しかし、漫画となると不思議なことにこれが けっこう アル
ということで、「嫌いな漫画」シリーズを行ってみたいと思う。一回一ジャンル。ジャンル数未定。今のところ「作者に幻滅編」、「MoててMoててKoまっちゃう〜MMKアホか編」、「いくつになっても、大人げないの。〜食わず嫌い編」などのジャンルを予定。(超・適・当!!)


そんなわけで

第一回 作者に幻滅編 いけにえ:日渡早紀『未来のうてな』




わたしが中3くらいのころ「ぼく地球」(地球と書いてタマと読む)こと日渡早紀(ひわたり・さき)作『ぼくの地球を守って』はクラスで華々しいブウムを巻き起こしていた。各巻が男子女子かかわらず級友の間を巡りに巡り、社会の時間に級友3人が同時に資料集を立ててその影で単行本を読んでいるというような状態が1ヶ月ほど続いた(あれ、たいして長くないか)。おそろしいことだ。しかしわたしが当時もっとも恐ろしいと思ったのは単行本巻末に掲載されている「ぼくたまクラブ」(記憶曖昧)とかいう読者ボイス紹介欄みたいなやつで、そこには「小6の女の子でぇ〜す!こないだクラスメートのたけし君にとうとう告白されちゃいました!だけどあたしの心は輪サマ(ハートマーク)一筋!たけし君もカッコ良かったんだけど、ごめんネって断りました(ハートマーク)」(注1・注2)などというキラキラした愛読者の声がふんだんに掲載されていたものである。

(注1:当時「コクる」「コクられる」という五段活用動詞はまだ人口に膾炙していなかった。注2:輪サマというのはこの作品の主要登場人物の一人、小林輪をさす。)

まあ多感なローティーン時代に時として見られるその種のおそるべき自己陶酔的偏愛がこの作品のファンに色濃く見られたであろう件は置いておくとして、しかしこの『ぼく地球』は、たしかにパワーを持った作品ではあったのだ。漫画を真似て前世の知人を捜しだす人々が大量に現れたと聞いても、わたしはそれほど驚かない。わりと緊張感のあるサスペンス風の展開に加え、さまざまな「胸苦シイ」要素が——前世から連綿と続く恋愛関係にもかかわらずすれ違い続ける二人であるとか、天涯孤独の身で戦場に育ち、他者に心をけっして開けないニヒルな天才であるとか、前世で女であったのに現世では男に生まれ、だが前世と同じ男に報われない愛を向けつづける少年であるとか、——もうもうもうもう、「ソウイウモノ」にふんだんに満ちあふれた作品であったのだ。そういう胸苦シイ要素は今となってはオリジナリティがあるように見えないし、実際書いててカナリ気恥ずかしいのだが、当時としては斬新であったし、何より単行本にして21冊も費やしただけのことはあって、各々の要素がそれなりにしっかりと描きこまれてはいた——とくに中盤の前世編で展開された各々の登場人物の背景物語の丁寧さが、今なおこの作品を凡百の漫画の海の水面から頭一つ抜きんでるものにしているように思う。ちなみにわたしは一成の切なさに心打たれました。あとやっぱり紫苑と未来路が好きでしたね!切れ長の瞳の人に弱かったみたいです。(アッハハ)



(・・・消したい過去)





・・・本題に戻れば、結末の締め方に多少の不満はあれども、どんどん宇宙規模で壮大になってく話をけっこう綺麗にまとめたし、よく描きあげましたね。お疲れ様。っていうのが『ぼく地球』に対するわたしの感想だったのであり、今でもそうだ。だが、その後に来たのが酷い。


『未来のうてな』が 酷い。


酷いんだ!(ハアハア)いや落ち着いて要点を記そう。最初の頃は良かった。ごく普通の高校生男子のところにある日届く異界からの不可解なメッセージ、って書くとなんのオリジナリティもありませんが、まあこういう不可解な謎をチラ見せしつつ事件を起こしていく感じが、それなりにまあ読めるものではあったんです。それが半分くらいからもういかん。何がいかんって、

ちょっと気の弱かった主人公が突然髪を伸ばし始め背が伸びモデルを始めモテモテになる  とこ。そして半疑問系使うの漫画の中で!漫画でだよ!「マジかよって感じ?」とか言っちゃって、もう、



   気持ち悪い



いやあほんと気持ち悪いですよ。
気持ち悪いのはモデル業それじたいじゃない。あれは立派な一つの仕事でしょう多分。何が気持ち悪いかっていうと、「「少年」から「男」になってかっこ良くなって、最初パワーバランスで勝っていた彼女をやきもきさせはじめる」という現象を構築する要素として「モデルはじめる」を使うとこですよ。チーンプ!超チンプ。てか「モデル」が「カッコよさ」の記号として陳腐にシンボル化されてたのっていつの時代だよ。

このころから絵もダメになっていきます。まあこれは好みかな、でももともとわたしは『ぼく地球』の真ん中から4分の3くらいの絵がいちばん好きだったんで、『うてな』の男の眉毛ひん曲がってて口と鼻が妙にとんがってて女は目が異様にでかくてキャピキャピした絵ってすごいダメでした。

そんで話の方もまったく面白いとは思いませんでした。いやあそれを読んだ時期すでに輪廻とか前世とか出てきた時点でどうでもいい感じに(自分が)なってきてたってのもあるが、それでも客観的に見て前作で作者自身が使い古したテーマを何レベルも劣化・矮小化して再利用したとしか見えませんでした。醜い獣と美しい少年の愛とかも入ってましたが、ぜんぜん映えてません。描けてません。お話が。

あとその「前世から連綿と続く運命の愛」がさー この『うてな』では何をとち狂ったのか「特定の人との間に子どもを作らなくてはならない」になるんです。怖いよ!そんな運命は鼻くそと一緒に丸められて教室の床に指ではじき飛ばされるがいいよ。

それと!その現世では高校生のカップルである二人の運命の恋人達が出てくるんですが、そのカップルが酷い。何が酷いって、避妊しねえ
そんで、女の方が「避妊してくれないの・・・どうしよう・・・」って友達に相談してたら、そこにやってきた男の方が言うの。「お前におれの子供生んでほしいと思ってるし?」


  最悪です
 

  ほんと最悪です



何より最悪なのは、そう言われて女の方がぽーっと顔赤らめて感動して胸キュンして「あなたについていきます いくらでも中出ししてください」状態になっていることです。アホか。アホだ。魚喃キリコの短編集の台詞を借りればまさに「こいつらパーかい。パーなのかい」ですよ!本当に!

てかむしろ幻滅なのは、こういうやりとりと関係性を「感動的な愛」だと作者が思ってることなわけなのです。ああ気持ち悪い。いやあ『ぼく地球』は昔一生懸命読んでたことをちょっとだけ隠したい部分もあるけれど、まあ客観的に見て花ゆめコミクスのなかで「名作」の一つに数え上げられるだろうとは思うのですよ。風呂敷広げすぎたお話をきちんとまとめる能力もあるし、人物の感情描写もそれなりにできる作者だと思ったんだがなあ。それがその次の作品ではこれだけ酷くなったか、と。つか作者はこんなクソだったか、と。しかしこれが今後快方に向かうとは(なぜか)思えない部分がある。てか『ぼく地球』も『うてな』も自分で買わず わたし 人から借り読みと立ち読みなんですが(酷い)まあ買って文句を言えという気もちょっとだけしますが。


つかギャアアアー!ウィキペディア見たらこの人いまぼく地球の続編連載してんの!?どんなんなってんだろ・・・(オソロシヤ)
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Comments
だよね
至極まともな意見だと思う
ありゃねぇよなぁ
Posted by まつ - 2010.08.17,Tue 12:36:27 / Edit
そ、そうでしょうか
今見返すと暴言が多く
ひどいレビューだなあと我ながら思ったりもします……

Posted by やもり - 2010.08.18,Wed 22:40:52 / Edit
無題
そんなもんか・・・ 健が髪をのばしたのはいやでしたが、設定はよかったと思います。僕の地球は読んでないのでよくわかりません
Posted by まだら - 2010.12.21,Tue 17:51:27 / Edit
よきかな
googleで何気なしにここにきました。
いや、あなたの意見正しいと思いますよ。
私どっちも好きなんすけど。

ネットで作品批判すると基本的に信者に発狂されることがブログ界隈では多いようなので、建設的な批判のみにわたしはコメントつけてます。批判も許容される文化がネットにも来るといいなと思って。

Posted by eternalwind - 2011.12.23,Fri 00:13:28 / Edit
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