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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2007.10.22,Mon
いや、おもしろいぞこれ


なんというか身近な面白さ。
『こころ』とかよりも、もっと卑近で、雑音の多い人物像とプロットの気がするが、それはそれなりの魅力がある。
『それから』より断然面白い。「人の生きざま」を主題に添えた小説の書き方が洗練されてきたということなのだろうか。知らんけど。いや、『猫』とか『三四郎』とかは、そういういかにも「近代小説」な主題より風刺っぽいコミカルな部分部分が前面に出てた気がするので。(『三四郎』は中期以降の作品への移行を示す、とか言われるようだが、自分の読後感としては全体の筋というよりは部分部分の、ちょっと滑稽な風刺っぽいエピソードのほうが強く印象に残っている)

しかしながら漱石の感性の現代性に脱帽。というよりも、当時1910年代の社会における人々の意識が、意外と現在の感覚に近いってことなのだろうか。
なんというか、当時の人々の「社会に生きる面倒くささ」だの「人と人との関係性の辛さと面倒くささ」だの「自分というものの面倒くささ」だのがものすっごく身近に感じられるという驚きと同時に、そうしたものを小説として書きあらわす、漱石の文学意識や文体も驚きなのだな。二層において、あまりに現代的なわけだ。描かれているものも、描きかたも。

ここ数年、「過去とは異国であり異文化である」が意識の内面にまで染みいってしまったのか、100年前の人々とこれだけの感性を共有しているというのは正直言って驚きだ。そうして、かえってこれは日本の小説だから驚きなのかもしれない・・・19世紀末の英独仏の小説とかなら、「自我」というものの感覚がわれわれの普段の感覚と似通ってても、驚きもせず普通に読んでしまう気がするし。皮肉なことだ。

あるいは、思い描いていたのより「低俗」な面白さである気もする。たとえば中盤のクライマックスの一つ。妻の心の内がわからず思い悩む兄から、彼女の貞操を試すために旅行に行って一晩二人で過ごしてくれと頼まれる主人公。馬鹿を言うなと一度は断ったものの、日帰りならと押し切られ、いつも冷笑を浮かべているだけで何を考えているのかさっぱりわからない嫂(あによめ)を連れて仕方なく遠出する主人公。奇しくも押し寄せる嵐に電車も電話も不通になり、二人は出先で一晩すごさざるをえないことに……
って、どこのハラハラドキドキだ、これ。そしてなんて俗っぽい盛り上がり方なんだ!でもスッゲーと思っちゃうの。


日本語の小説だと、こう制限を設けないといつまででも読んでしまうので、「風呂以外では読まない」と決めたのだが、半分を超えたあたりから収まりがつかなくなって、一気読みしてしまいました。でも残り50pを大学に置きっぱなしにしてきてしまったの……(青空文庫プリントアウト)オオオ……明日……明日を待て……



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Comments
風呂読書
風呂読書、私もNY生活の快楽のひとつです。『蒲団』に『行人』なんて、いいですね。どちらも何十年も前の若いころ読んだきりで、いま読むとどう感ずるんだろう? 私の風呂読書は主にミステリーで、いまは『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』の原作(悲しいことに日本語訳)です。
Posted by - URL 2008.03.05,Wed 08:39:46 / Edit
コメントありがとうございます!
『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』は悔しいことに見逃してしまったのですが、エントリを拝見させていただくとやっぱり面白そうですね。
わたしも映画を見ていて英語の会話が聞き取れずに話についていけなくなることが、いまだによくあります。雄さんも書かれていましたように地方アクセントがなかなか難しい。DVDで見るときはたまに英語字幕をオンにしたりもします‥‥(情けないながら)。
Posted by やもり - 2008.03.05,Wed 21:55:26 / Edit
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時折超つたない英語を喋りますが修行中なのでどうかお許しください。

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