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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2006.06.10,Sat
考えてみるとアレですよ。「好きな作家は誰ですか」と聞かれるととりあえず「漱石?」と(疑問符付きで)答えてきたわたしであったが、そして確かにまちがいなく漱石は好きであると思うのだがアレなのです。

実は数えるほどしか読んでいないのです。

中編・長編に絞れば3つとかだ・・・。でもいいもん。数が問題なんじゃないもん。どれだけ深く読んでいるかだもん。と、5歳児のような口調で拗ねてみたところで それほど深く読み込んでいる自信もない。そもそも深く読むって何なのだという話です。・・・しかしなんで好きなんだろ・・・というかなんで好きなくせにあんまり読んでないんだろう。そのへんが自分のとても不思議な性癖であります。わたしにとって別格ベスト1の漫画を描いた漫画家の単行本も二冊しか持ってないよ。寡作とはいえそれなりに描いているのにさあ・・・





というわけで『それから』読んでます。いま三分の一くらい。
しかしこの漱石という人はすごいなあ。なにがすごいってこの主人公の価値観と世間一般の価値観の双方からの微妙な距離の取り方。ここに登場する人々は、代助も代助の父も平岡も、みな異なるありかたで、どこか合理的でどこか達観していながら、白々しく愚か——愚かと言うよりは浅ましい。そんな書き方がすごいなあ。
で この漱石にとって女というのは「女という生き物」なのだなあと再確認する。そして女という「種族」をうつくしく描くことにかけて、この人の文章はほんとうに見事であると思う。

「貸してくれと切り込んで頼んだ時は、ああ手痛く跳ね付けて置きながら、いざ断念して帰る段になると、却って断った方から、掛念がって駄目を押して出た。代助はそこに女性の美くしさと弱さとを見た。そしてその弱さに付け入る勇気を失った。この美しい弱点を弄ぶに耐えなかったからである。」

ちなみに女性は【にょしょう】とルビがふってあります。ああ 堪りませんね!
このあまりにも典型的でステレオタイプなニョショウの描き方が しかし美しく、いや美くしく見えるのはどうしてなんだろう。同じような女性像で陳腐なものなぞ巷には溢れかえっているというのに、なぜこの文章を蔑む気にはならないのだろうか。
はあはあ、なるほど、漱石にとっての女というものはこういう種族だったんだね。と、その文章における女性のあまりの遠さ(それこそ陳腐な言葉の使い方をすれば他者性というやつだ)に諦念にも似た了解を覚えることはあっても、陳腐だとは思わないんだなあ。むしろ綺麗だと思えてしまうんだ。何故だろう。

ちなみに今まで読んだ限りでは三千代より梅子のほうがわたしの目には魅力的に映ってよ。なんでだろう三千代さん綺麗すぎて印象薄いんだもの。梅子さんは人間味もあるしこう、ひとくせふたくせあるところが好きです。





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