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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by - 2024.05.17,Fri
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2009.07.26,Sun


諸星大二郎の作品には童話や神話を題材にしたものが多く見られる。さらに、その独自の物語解釈にはいつも元となる童話や神話への深い造詣が感じられるのも特徴だ。諸星氏の作品群からは、孫引きに孫引きをくりかえして陳腐化し、つまみ食い的に作られた「なんちゃってファンタジー」の世界観からは一線を画した雰囲気が感じられる。





今回取り上げる『スノウホワイト』も同様である。この短編集はグリム童話のお話を、あらすじだけはそのままに、舞台を未来世界へと移したり、あるいは結末に独自の解釈を加えるなどして加工した短編を集めたものだ。血入りソーセージがレバーソーセージを招待する「奇妙なおよばれ」や、仲良く協力しあって暮らしていた小ねずみと小鳥と焼きソーセージの関係バランスが崩れていく様子(笑)を描いた「小ねずみと小鳥と焼きソーセージ」など、グリム童話のなかでもややマイナーな話を選んでいるあたり、諸星さん独特の好みが感じられる。そのほかにも「めんどりはなぜ死んだか」など、滑稽なギャグ路線と見せつつ基調は残酷でナンセンスであるあたり、グリム童話の雰囲気は諸星さんが十八番とする作品風潮のひとつとうまくマッチしているのかも知れない。

ただし、諸星大二郎を他にも読んできた身にしてみれば、この短編集『スノウホワイト』に集められている作品群は、少々ものたりない感じがするのも事実である。

たとえば以前にも触れた『私家版鳥類図鑑』の「鳥を見た!」、あるいは『私家版魚類図鑑』の「魚が来た!」などは、作品を通じて一つの世界観(あるいは雰囲気)を描出するだけでなく、それと同時に確固たる起承転結をつまびらいていくことによって、読書の密度ある「経験」を産み出していた。それに比べるとこの『スノウホワイト』は、不可思議でつかみどころのない雰囲気や、陰鬱で重苦しい基調音に独特の魅力がありながらも、物語の展開に、もうひとつひねり返しが欲しいと思わせることは否めない。





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