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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by - 2024.05.16,Thu
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2008.07.30,Wed



 さて今日もようやく論文に取りかかるかとコンピュータの前に座った今日の午後、友人からメールが入っていた。「今日ダーク・ナイト見に行かない?」
かなりの映画狂だが、普段はほとんどアクション映画を見ないはずの彼女。一体どうしたのか? 「いやダークナイトのオンライン評価がちょっとものすごくて、これは見なきゃならないかもと思って」。へえー? でもバットマンでしょ? アメコミでしょ? でも本当にどうやら評判がすごいらしい。ちょっと信じられないくらいすごいらしい。
 というわけで、論文ほったらかして、UK公開から5日後、見てきました『バットマン・ダークナイト』。


そして感想は




★1





んおおおおおおお

……ジョーカー!
  ジョーカー!
  ジョーカー!!!





ちなみに今回はネタバレはないはず、です。


・IMDbユーザー評価での恐るべき高得点
 さて、この『ダークナイト』、USA公開から10日あまりが過ぎた7月29日現在、オンライン映画データベースではおそらく世界最大であるIMDbでユーザー評価9.4点(満点は10点)を獲得し、あっという間に歴代映画トップの座を獲得している。
 友人のメールに「いやオンライン評価がほんとにすごいんだって」とあるので、どれどれと思ってIMDbを開いた瞬間、目を疑った。正直IMDbのサーバーのエラーかなんかかと思った。
 いやこのサイトをそれなりの間利用していればわかるのだが、9点以上というのはホント、ちょっとやそっとで付く点数じゃないのです。たとえば現在のトップ映画を並べていくと、7月29日時点で第二位が『ショーシャンクの空に』9.1点、3位が『ゴッドファーザー』9.1点、4位が『ゴッドファーザー・パートII』9.0点、第5位が『続夕陽のガンマン』9.0点と続く。
 これは投票数との関連で算出されている順位で、高得点映画のなかでも多数の投票からなるものが、より高順位となるようだ。だからしょせんはハリウッドの巨大予算ものが強く、そもそも見る人間が少ない単館シネマ系の映画はほとんど入ってこない(だから私が好きな映画はあまり入ってない)のだが、まあそれは今回は置いとくとして、ハリウッド系のなかにだってよくできた映画はいくらだってある。私が見た作品のなかで言ったって、8.9点で第6位の『パルプ・フィクション』は言うまでもなく、8.6点で25位につけてる『羊たちの沈黙』だって、8.5点で34位につけてる『セブン』だって大したもんだった。さらには映画史上の古典である市民ケーンだのアラビアのロレンスだの黒澤明の七人の侍(笑)だのも、みんな総合した上での順位なのだ。
 まあ、公開直後の興奮の影響は大きいんだろうけど、それを差し引いても、実に16万人以上の投票で、10点満点中9.4点がついているっていうのは尋常でない。


・ぶっつづけの刺激とスペクタクル
 そんなわけで前評判がすごかったわけだけど、じゃあ、じっさい見てみるとどうだったか。
 結論から言うと、「そこまでではない」でした(笑)。残念ながら。
 ただしこれは「いくらなんでも歴代映画トップではありえない」という意見であって、暴力系のアクション・サスペンスとしては、かなりの良作だと思う。刺激的な演出を2時間半びっちりと引っ張る技量はかなりのものだし、先のまったく読めない展開がけっこうあった。正直、大予算系のアクションヒーロー映画の展開なんてお決まりだろうと思っていたし、まあこの映画だって7割型はお決まりなのだが、残りの3割でかなり楽しませてくれた。効果音の入れ方も見事だったし。
 

・マッドネス、ナンセンス、ダークネス
 それと特筆すべきは、映画全体の雰囲気だろう。ギャグみたいなムキムキマッチョイメージは抑えられ、全体的に陰鬱なイメージが強く押し出されている。『シン・シティ』あたりから顕著になってきたと思うんだけど、グラフィック・ノベルズを元にした映画って、B級感とシリアスな美学のスレスレあたりにあるダークバイオレンスなマッチョイズムをジャンルとして成立させてきているような気がする。
 血と暴力とナンセンスにまみれた感じの中に、つねに笑いやウィットを織り交ぜているのも特徴で、その笑いがどれもまたブラックだ。それもかなり独特な、アホウとナンセンスとインモラルをごたまぜにした感じ——英国系ジョークみたいな洗練された皮肉ではなく、馬鹿馬鹿しさと卑屈さと暴力がひとつなぎになった感じ——で、これは悪役ジョーカーの台詞に、もっとも直接的に表れていた。



★2




・ただすばらしきジョーカー
 というか、実のところこの映画について言うべき事はたったひとつだけだ。すなわち、「ただ、ジョーカーを見よ」。
 バットマンの仇敵ジョーカーの演技・演出こそが『バットマン・ザ・ダークナイト』を幾千万のハリウッド系娯楽映画から頭一つ抜きん出させているものだ——って、今更わたしが言うまでもないことで、これは英語圏でのオンライン映画レビューが口をそろえて言っていることなんだけど。
 まずもってこのジョーカーのメイク、ボロボロで取れかかっているんだけど(画像1・2)、コレは良案。これまでのバットマン作品でジャック・ニコルソンがやったらしきジョーカーの姿はぴっちりと隙のない紳士系クラウン(道化)なんだけれども(画像3)、今回のジョーカーは脂ぎった髪の毛、くたびれた服、ぎらぎらと光る目、乾燥して剥がれかかった白粉と口紅という格好で、道化と狂人、笑いと恐怖というものの境界にある本気でヤバい感じをあますことなく演出している。




★3



 そしてジョーカー役のヒース・レジャーの演技も際立っている。神経質に舌を舐めるくせも、妙に子供じみた言動も、卑屈きわまりない視線も、臆病さと残虐さを秒単位で入れ替えるさまも、なんというか、「シンプルな善玉悪玉の物語はつまらない」というような批判は、このジョーカーの前では無力だ。『ノー・カントリー』の殺し屋を見たときにも思ったことなんだけど、いやあ、「純粋悪」の表現って奥が深い。脚本もジョーカーひとりの台詞に8割型の力を注いでいるんじゃないかと思った。存在感が違いすぎるんだもの。
 ヒース・レジャーはこの『ダークナイト』を撮った直後に急逝したという。まだ28歳だったというから、残念な話だ。あのジョーカーが28歳だったということも驚きだが……、
 
 で、肝心なヒーローであるバットマンだが、ウーム……いまいち印象が弱い? まあ、ヒーローってのはその存在自体クリシェ(陳腐、型通りであること)と切り離しては存在しえないもんなあ。仕方ない。
 バットマン役をやったクリスチャン・ベールは、一月程前の『レスキュー・ドーン』のレビューでも取り上げた怪優ですが、個人的には向こうのほうが存在感があって好きだったなあ。この人、怪優なんだけどイメージが異様に少年くさいんだよね。ヤバいくらい楽天的で向こう見ずな小学生って感じで、それがレスキュ―・ドーンではうまくはまり役になっていたという気がしたんです。バットマンってマッチョなおっさんイメージだけど、ベールは逆に変に未成熟な感じが売りだと思ってたんだが……ベストな俳優はほかにいなかったのかな?


 まあいずれにせよ、2時間半大いに楽しみましたよ。よくできた映画だった、うん。歴代映画トップ1の座はかなり疑問があるというか、すぐに別の映画に取って代わられるんじゃないかと思うけど、でも娯楽作品として十二分にオススメできる映画です。



---
日本語公式ウェブサイト
・その他関連ページ 映画生活



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Comments
ヒース・レジャー!!
この人!!
チョコレートの息子やってた人かあ!
とこのエントリを見て今更理解しました。
ブロークバックマウンテンの片方が亡くなったのは知っていたのに、その人がチョコレートの息子役だった事に全く気付かなかった。
というか私、チョコレートの息子役=スパイダーマンの親友役 と思い込んでいて「えっ!てことはスパイダーマンに出てたあの人が亡くなったの!?」とものすごい勢いでウィキ見に行ってしまった。何だあ・・・違う人か・・びっくりした・・
スパイダーマン殆ど見たこと無いけど・・(ファンじゃねーのかよ)

ところでダークナイトはこちらでも封切りしたようなのですが(無頓着)、CMがちょっと変わってて印象に残っております。見に行こうかな、と思うけど、今までのバットマン全く見てなくても楽しめそうです?それが不安。
Posted by しる - URL 2008.08.05,Tue 09:50:22 / Edit
大丈夫だと思うよー
わたしもバットマンはこれまで一作も見たことなかったし、コミック版も読んだことなかったよ。たぶん大丈夫じゃないかな?
あーでもこれまでの作品と登場人物がけっこうかぶってるみたいで(ヒロインとかバットマンのおつきの人とか町の警部補とか)、そういう人たちとバットマンの関係がいまいちわかってなくて最初はちょっと混乱した。あと舞台がどんな場所なのか理解するのにも時間かかった気がする。

ブロークバックマウンテンはじつは見てないんだよね! かなり評判がいいので、見なきゃと思ってるんですが。近くのDVDレンタルで借りてこようかなあ。
Posted by やもり - 2008.08.05,Tue 23:43:37 / Edit
多分「うえっ」て思いますよ。
ブロークバックマウンテン見てる間に一度は絶対思いますよ。エグいってわけじゃないんだけど、男二人の身勝手さがものすごい強調されてるし、特に女の目から見るとそれが凄まじく浮きだって見える。ただ一人で見るよりお友達と(出来れば女性と)見たほうが・・一人で見たらいらいらしてキワー!ってなりますよ。

では私はダークサイドの方を・・・しかしジョーカーの酷い有様は、男前がやるとなお映えますな。
Posted by しる - URL 2008.08.07,Thu 09:52:50 / Edit
マウンテン
わはは身勝手映画。面白そうだ。ほんじゃ同居人の子かなんかと一緒に見ようかなあ。

テレビCMは映画予告編とは違うのかな?ヒースは二十代にはまったく見えんかったですよ……男前だったのねこの人本当は……って感じ。
Posted by やもり - 2008.08.08,Fri 09:39:59 / Edit
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