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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by - 2024.05.17,Fri
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2008.06.12,Thu



 すでに何を書いたか記憶もあいまいになっているほど昔の関連エントリ「ナポリ編(1)」(2月にアップ)であるが、じつはナポリ編はまだ終わっていなかったのである。ということで、前エントリから4ヶ月、当の旅行からじつに半年以上を経て、なお旅行記の続きをアップすることにする。
 つーか本気で早くこのシリーズ終わらせんと、記憶がやばい。いまもナポリで一日目・二日目・三日目に何をしたかとっさに思い出せず、前エントリを参照しているようなていたらく。始めたことは早く終わらせようね! 忘れちゃうのもったいないしね!


・国立考古学博物館
 さて、一日目はスキャッパ・ナポリを中心とした市内観光、二日目はポンペイへと足をのばした今回のナポリ滞在(いやつっても半年前だけど)。三日目のふたたびの市内観光では、ナポリの観光名所に手当り次第に行ってみることに。
 朝起きてまず向かったのは、ナポリの一番人気観光名所とされる「国立考古学博物館(Museo archeologico nazionale)」。街で一番人気の観光名所が考古学博物館だなんて地味ィイイ、と思われるかもしれないが、ところがどっこいこの考古学博物館の所蔵物は並じゃないのだ。なにしろ、ポンペイとヘルクラネウムでの発掘品のうち、貴重な物はほとんどすべて、この考古学博物館に移されているからだ。たしかにポンペイは屋外遺跡だからある意味では雨ざらしで、貴重な美術品やモザイクなんかもポンペイに置きっぱなしだとすぐに劣化が進んでしまうもんなあ。
 
 ナポリの宿はこの考古学博物館のほぼ真ん前に取っていたので、博物館にはほぼ開館と同時に入館。街一番の観光名所といえども、平日のしかも閑散期、ツアーが一組二組いるほかは、客はちらほら見える程度だ。一日目に買ったアルテカードのおかげで、ほんらい7.5ユーロである考古学博物館の入場料はタダ(われわれの場合はポンペイについで二カ所目の入館であったため)。

 この博物館で面白かったのは、やっぱりポンペイ出土のモザイク群。中学高校の世界史の教科書に載ってるような、「え!これ知ってるよ!」なモザイクが次から次へと現れてくる。見所チェックを事前にちゃんとしていないために、驚きがひとしおだ。一番びっくりしたのが、コレ。




アレクサンダーーーーーーー!




 誰もが見たことがあるであろう、かのマケドニア帝国のアレクサンドロス大王陛下です。この肖像ってポンペイ出土のモザイクだったのか……というか、事前にちゃんとガイドブックを読んどけば、どこにでも載っている情報であるはずのような……しかしアレクサンダー大王の絵って必ずこれですよね。ほかの肖像があんまり残っていないんだろうなあ。
 全体像は下のような感じです。



 これはマケドニアがダレイオス3世率いるペルシャ帝国と戦った「イッソスの戦い」(BC333年)の様子だそうですが、かんじんのマケドニア軍のほうはモザイクがかなりはがれて、アレクサンドロスしか見えなくなっちゃってますね。ペルシャ軍のほうはかなり鮮明に残っているのに……それにしても王様見た目が若いなあ。少年じゃないか。ってか今調べたらこの戦いの時点で23歳だそうですよ。若いはずだ。

 あと有名どころといったらこれでしょうか? これはポンペイで有名なモザイクですよね。




 個人的にはコレも好きでした。ながぐつ半島の人びとはローマ時代から海産物をたくさん食べていたんだね。さすが食の国イタリア。




 考古学博物館内は撮影はオッケーだけどフラッシュが禁止なので、映像はちょっとブレているところがありますが、ご勘弁ください。とくにガラスケースに入っているモザイクや彫刻は、ガラスが光を反射するので、ちょっと撮りづらかった。


 さて、ポンペイ出土品のコーナーをぶらぶらしているうちに、ふと気づくと真っ赤な壁と天井に覆われた、なんとはなーしに扇情的なコーナーに入り込んでいる。んん……? 展示品をよくよく見てみると、さらに、んん……? なかなかに刺激的というか、アレだのコレだのを身も蓋もなく描いた彫刻だの絵だののオンパレード。
 いつのまにやら、この博物館のセンセーショナルな見どころである「秘蔵陳列室(Secret Cabinet)」に入りこんでいたのでした。この秘蔵陳列室、またの名を「猥褻作品陳列室(The Cabinet of Obscene Objects)」。19世紀当時には国の正式な認可を受けた重要な男性訪問者しか見ることの出来なかったという、古代の性芸術のお部屋。閉じていることも多いらしいのですが、われわれが訪れた日にはツアーの関係上か、たまたま扉が開かれていたようだ。超ラッキー! だって見たいじゃないですか古代猥褻物。
 
 古代の神話などを見ればすぐにわかるが、人間の性器はかなりユニバーサルに「豊穣」や「生命」のシンボルとして用いられる。したがって、それらをかたどった飾りや、性器を異様に強調した人形などは、転じて魔除けや幸福のお守りになったわけですな。この「秘蔵陳列室」でもまあ、ちょっとだけ呪術的というかおまじない的な遊び要素をふくんだ古代の日常品が展示されているのだが、それらも近代の価値観のなかでは女が絶対に見てはならないほど冒瀆的な「猥褻物」にしかならないわけだ。
 この陳列室の歴史を通じて、古代ギリシャ・ローマの性観念のありかただけでなく、近代西洋の性概念もが相対的に見えてくるような気がする。そういう意味で、陳列された物品の説明だけじゃなくて、秘蔵陳列室そのものの歴史が各所各所に事細かに解説されているありがたかった。われわれが博物館を通じて見るのは、エキゾチックな古代だけじゃなくて、古代をエキゾチック化してきた博物館の歴史そのものでもあるわけだからね。

 まあそういう理解の上で、しかしそれにしても、陳列されていたものは変ちくりんだったなあ。滑稽というのか……。巨大なファロスに手足がついたキテレツな動物をかたどった「ドアベル」とかが大小さまざまに十個も二十個もぶら下がって並んでて、なんでドアベルに性器くっつけなあかんのだろう。っていう感じです。まあ、上にも書いたけど性器は魔除けの意味があるんで、多く戸口に飾られたという事情があるみたいですが。干したイワシを鬼よけに戸口にぶら下げるみたいなもんかしらね。


なんか笑えますね
羽までついとる




 そんなこんなで、秘蔵陳列室については思わず売店で本まで買ってしまった私(英語版)。いや、なんだかんだ言って、こういうオバカなものを至極まじめに学術的に論じたものって、好きなんです。




・聖エルモ城、ヌオーヴォ城、「卵城」
 午前中いっぱい考古学博物館を見て、ようやく外に出る。昨日のポンペイに続いて、今日も外はびっくりするくらい良い天気です。おつぎに向かったのは、ナポリの西の丘上に建つ聖エルモ城。14世紀に建てられたという要塞城で、入場料は2ユーロだったかな? アルテカードを使えば半額です。
 とりたてて何の見物があるというわけではなかったけれど、海に面したナポリ市を一望できる景色がとにかく絶景でありました。ぽかああんと抜けた青空と、どこまでも続く海の上に時たまお船がしっぽの波をひいて走っているのがちっちゃく見えて、うーん、ストレスの抜ける景色でありました。





西洋のお城の中の光と影のコントラストって、なんか好き




 おつぎはヌオーヴォ城(Castel Nuovo)へ。途中でそのへんのカフェでご飯を買ってベンチで食べたりしつつ、急な坂を下っていく。このカフェ、ドイツ人らしき観光人のほかにまったく人がいなかったが、買った飯はうまかった(わたしピザ、友人はハム入りのおかずパンみたいなやつ。双方ともにボリュームたっぷり)。途中で通ったスペイン通りは、ナポリのなかでも下町中の下町といった雰囲気で、派手な格好をしたティーネイジャーのスクーター二人乗りが、ものすごいスピードで5センチ横を通り過ぎて行ったり来たりで、かなり怖かった。またそれが何組もひっきりなしに走ってるんだ。あれもナポリ独特のノリって感じだったなあ。ローマとかフィレンツェでは見られない、ちょっと泥臭くて古くさい不良な感じの風景。



 ヌオーヴォ城はルネッサンス芸術の極だとかいう門が豪華でした





 写真からもわかるように、ヌオーヴォ城に来た時点で日はすでにかなり傾いている。一日歩き通しのわたしたちも、当然かなりの疲労困憊度。それでも「せっかく来たんだから」の貧乏根性(主として友人ではなくわたしの貧乏根性)で取りあえず向かったのは、ナポリ宮殿。ただ、ここに関しては、とにもかくにも絢爛豪華な絵だの壁紙だの絨毯だののオンパレードを、ひたすらぼんやり黙々と見て回っていた感じです。内容ぜんぜん覚えてないや。おとなしくどこかのカフェで休んでいた方がよかったような気も……。
 この日の最後に向かったのは、夜景が美しいという海沿いの卵城(Castel dell'Ovo)。オレンジの明かりに照らされて、大小のボートが立ち並ぶ様や、海をはさんで遠くにちかちか光る街の光なんかが、とても綺麗でした。



 そんなこんなで強硬突破だったナポリ。前回も書きましたが、わたしはかなり好きな街でした。食べ物も、観光名所も人々の感覚も街の空気も、みんなどことなくあか抜けていなくて、素朴で、にぎやかで、ガラが悪い。でもそのガラの悪さのわりに、どこかカラッと明るい雰囲気を感じさせる。ローマだとか、フィレンツェのウフィッツィ美術館みたいに「人間の創造しうる芸術の極みが結集した」ような感じではなく、もっともっと世俗的で地味な感じ。でもどこか不思議な魅力があるんだよなあ。

 街角で見つけた現代版の「猛犬注意」の看板。古代都市ポンペイの「地元」意識が洒落た感じで現れていて、すごい可愛い。






 以上、長々と、ナポリぶらぶら散策記でした。お次はローマ! ローマ!






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