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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2008.12.23,Tue
 あんまりブクログに書くことがないのもアレだなあと思い、趣味関連だけでなく日ごろ研究関係で読んでるものも追加していくことにしようとポチポチやっているのだが、どうも一行感想のはずのものが長くなりすぎて困る。ちなみにこないだ上げた「眼球譚」も本当はブクログに上げるつもりで書いた。でも書きたいこと書いてるうちにすげー長くなってしまったのでブログ行き。あのブクログの仕様だと長文レビューは見にくいんだよね。
 で、今日もD論執筆の息抜きにと思ってミニ感想を書き始めたら、例によって長くなっちゃったのでこちらに来た。ていうか最初から短く収める気なさすぎだよあんた。(と自分に言った)
 そいでもって書いた本はこれですよ。すでに古典ですね。




 これの原著が書かれたのは1990年。日本語訳が出たのは1999年。わたしがこの本を買って読んだのはたしか2002年か2003年。だから、そのときすでに原著が書かれ発表されてから10年以上が経っていたわけだ。たぶんその10年の間に、科学的・生物学的なカテゴリーをも絶対視せず、歴史的構築物としてみるというスタンスは、急速な勢いで広がっていたのだと思う。加えてわたしはこの構築主義的なスタンスが、思考を通してではなく感覚的にすっと入ってくるタイプの人間だった。アカデミックな言語に触れる前からはぐくんできた自分自身の世界観が、構築主義と非常に相性のいいものだったのだ。
 したがって、「(社会的な性であるジェンダーだけではなく)生物学的な性とされるセックスもまた、本質的な区別ではなく、権力とのかかわりのなかで歴史的につくられた区別である」という本書の議論は、当時のわたしにとってそれほど斬新さをもって響かなかった。だから、「いやあ、まあそうだよね。この考え方を思想的に理論的につきつめた本なのね」程度の思いが、その当時の感想だった。
 しかし今になってぱらぱらと見返してみると、この本で書かれたことの重要性があらためて感じられるように思う。「身体」が「言語」の規範でできているというのがいかなることなのか、そこから自分自身がこぼれおちるとはどういうことなのか。人は言説と権力と法とが構成した自分自身の身体をどのように「生きる」のか。これらは、ここ2・3年のあいだに、ようやくわたしが実感しはじめたことだ。
 ラカンやフーコーの専門家からは、バトラーはこれらの思想家の理論を陳腐な形でしか理解していないとか、誤読しているとか言われることもあるようだ。だが、わたしたちが考えなくてはならないのは、なぜその「誤読」の結果でしかない「陳腐」な理解が、アクチュアルな問題関心とともにじっさいの社会の問題にとりくむ研究者たちの心に、「正確」で「専門的」な理解よりも深く響きうるのか、という、そこではないのか。「まず原典を読め」というのはまちがいなく大事な主張であるし、そうでなくてはならない。けれども、原典至上主義や純粋思想研究は時として、原典を「誤読」したある著作が、なぜ社会的に、あるいは広くアカデミズムにおいて受け入れられたのかという、その「なぜ」の視点を欠きがちなのだ。……というのはあんまり理論系でない凡庸な頭の一個人から、理論系へのかぼそい抗議の声である。




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怠け者のちいさなやもりですが色々ぶつぶつ言うのは好きなようです。
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