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本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
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Posted by まめやもり - mameyamori - 2008.11.29,Sat
 少し前のBBCウェブサイトのトップで、2007年にグラスゴー空港に炎上した車がつっこんだ事件について、容疑者のひとりであるNHSの医師をめぐるニュースが流れていた。(NHSはイギリスの医療保険システム。)ヨルダンで医師免許をとり、イギリスの病院で働き始めて数年になるというこの医師は、主犯格のひとりと疑われる人物(こちらもNHSの医師、イラク出身)に、金銭的援助とアドバイスを行った罪で問われ、裁判が進行中。

(BBCの報道原文に興味のある方はこちら)
 http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7741884.stm
 http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7733157.stm
 
 この医師の友人とされる主犯格の人物のほうは、昨年7月にじっさいにジープに乗って空港に突っ込んだ二人のうち一人である(もう一人はのちに全身火傷のため死亡)。こちらは報道によればすでに半分容疑を認めている。半分というのは、「人を殺す目的ではなく、建物で火事を起こして脅かす事が目的だった」と言っているため。
 問題となっているのはもう一人である。彼は事件の現場にいたわけではなく、容疑も否認している。彼は自分が働くNHSの医療システムをすばらしいものだといい、「イギリスという国を愛している」と言った。弁護人は、彼は職場でも有能な医師としてよく慕われていると言う。けれども彼は確かに主犯格の人物の友人で、過去に食事などをたびたびともにしていたという。すなわちグレーゾーンなのだ。もしかしたら本当に彼は主犯格の人物に金を貸していたのかもしれない。だがそれが爆弾事件への援助であったのか、たんにたまたま現金の持ち合わせがないと言っている友人への親切心からの金貸しであったのかなど、どうやって判断がつくだろうか。
 ある人がある特定の地域や国からやってきていて、その地域には特定の「政治過激派」と見られる集団がいたとしよう。そうして、その同じ地域出身の知り合いが――友人であれ親戚であれ――その武装集団の一員として容疑をかけられ、逮捕されたとしよう。だとしたら、その逮捕された人間と知り合いであり、友人であり、親戚であるかぎりにおいて、もう彼・彼女のあらゆる行動は「テロの支援」として糾弾されかねない。そしてその場合、無罪を証明するのはかなり難しいのではないか。なぜなら、「この人が爆弾事件を起こすなんて知らなかった。それを知っていてこの人にお金を貸したんじゃないんです。この人を家に泊めたんじゃないんです」と言ったところで、「知らなかった」という証拠はなにひとつ、あろうはずがないからである。

 このニュースが妙に気になったのは、そのさらに数日前にジム・シェリダンの『父の祈りを』(英題in the Name of the Father、1993年)をDVDで見ていて、その内容が今回の報道と重なって見えたからである。そうして、イギリスは20世紀の後半から現在にいたるまで、ずうっと「テロとの戦い」をやりつづけてきたのだということを、あらためて実感した。1998年の和平合意で北アイルランド紛争が一定の解決を見た3年後、2001年9月にニューヨークで世界貿易センターが攻撃されて世界情勢が一変し、2003年にはイラク戦争が始まった。20世紀から21世紀の変わり目をちょうど転換期に、イギリスはひとつの「テロとの戦い」を終えるやいなや、新しい別の「対テロ戦争」に踏み出したわけだ。そこで大きく変わったのは「市民の安全を脅かすテロリスト集団」とされる対象であり、「潜在的テロリスト」として名指される人々である。前者はIRAから「イスラム過激派」に変わり、後者は「北アイルランドなまりで話す人間」から「中東かパキスタン出身と思われる人間」に変わった。「対テロ対策」のこまかな戦略も、それがわれわれ自身の生活に及ぼす影響も変わっているだろう。だが大枠にはどれだけの違いがあるのだろう?





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Posted by まめやもり - mameyamori - 2008.11.20,Thu
あはは、なんと先日の映画レビューで紹介した大道芸人フィリップ・プティについて、子供向けの絵本が出てるらしい。たしかに魔法のおじさん(当時はお兄さんか)みたいなもんだよなあ、子供にとっては。モーディカイ・ガースティンという人の描いた本の翻訳絵本のようですね。

けっこう絵がかわいいですな。

Posted by まめやもり - mameyamori - 2008.11.17,Mon
 気づいたのは誰だったのだろう。仕事へ学校へと向かうニューヨークの人々の早朝の寝ぼけ頭が、一瞬のうちに覚醒する。1974年8月。当時世界最高を誇っていた世界貿易センターのツインタワーのふもと。誰かが110階のビルディングのてっぺんを指差し、その双子のビルの間に渡された細い細い綱の上をゆっくり歩いている人間がいると指摘したのだ。
 たちまちのうちにツインタワーの下には黒山の人だかりができる。地面からは砂粒のようにしか見えないその人影は、ただ綱を一度渡りきっただけでは満足しない。彼は空中に渡された綱に足をひっかけてぶら下がり、あるいは綱の上にごろりと横たわってポーズをとってみせるなどして(!)、およそ1時間ものあいだ、高度400mの空中にて信じがたいパフォーマンスを繰り広げた。人々は唖然としてその様子を見つめるばかりだった。
 居合わせた警官は言った――「誰もが呪文にかかったように彼を見上げていました。世界が二度と見ることのないものを自分がいま目撃していると、みな知っていたのです」





 夏に見に行ったドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』。けっこう面白かったですよー。ようやくレビューを書きましたのでUP。




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