本、漫画、映画のレビューおよび批評。たまにイギリス生活の雑多な記録。
Posted by まめやもり - mameyamori - 2009.03.10,Tue
土曜日の夜に二人の英兵が北アイルランドで殺され、今日また一人警官が撃たれて死んだ。土曜の方は真IRAという非主流派IRAの声明が出たらしいが、今日のほうはまだ詳しい事がわかっていないらしい。現在政治家が次から次へと怒りやら驚きやらを表明しているところ。
土曜日の事件に関して言えば、英兵が北アイルランドで殺されたのは12年ぶりだという話で、ショッキングなニュースとして日曜はUK中のニュースがこれでもちきりだったようだ。昨日まったくニュースをチェックしなかったわたしは今日のラジオニュースで知りました。紛争が激しかったころに英軍とドンパチやっていた主流派の暫定派IRAの元幹部(マーティン・マクギネス、現在は北アイルランドの副首相)までもが、今回の非主流派の行動を非難し、UK首相のゴードンブラウンも何があろうと和平の邪魔はさせない!と意気込み、ガーディアンは事件が起こった街を取材して(http://www.guardian.co.uk/uk/2009/mar/09/real-ira-murders-massereene-soldiers)、プロテスタント住民はもちろん(歴史的に英軍への反感が強い)カトリック住民も兵士の死を心から悼んでますよ!とか強調して、政府もメディアも「社会がまっぷたつにわかれていがみあってた時代はもう終わったんです」というメッセージを出そうとしていた矢先に、今晩の事件。まだ犯行声明は出ていないみたいだけど、また真IRAなのかなあ。
土曜日の事件では、兵舎にピザを届けに来た二人の配達ピザ屋さん(ポーランドからの労働移民)も兵士と一緒にまとめて撃たれて、うち一人は瀕死だということなんですが、真IRAはこれを「英軍にピザを配達したということは英軍の協力者だから正当な標的だ」という位置づけにするんかいな。これは昔、紛争をやってたころ、主流派IRAが兵士と警察以外を殺すたびにそれを正当化してた常套句だが。
しかしなあー、現在のUK内においては、しかもイギリスアイルランドうんぬん以外の多様な文化・民族性の問題が(皮肉にも)他のUKに比べて圧倒的に認知されてない北アイルランドにおいては、民族的にアイルランド系だけどUK国籍が取得可能(たしか北アイルランドの人はアイルランド国籍とUK国籍とどっちかを選べたはず)な人と、旧東ヨーロッパからの労働移民と、どっちがグローバルな権力構造に搾取されてる存在かというと、かなり微妙じゃないか。打倒植民地支配と反帝国主義を名目に武力活動をするんだったら、現在進行形で進んでる新しい帝国主義のかたちに意識的になったりはしないものなのか。しないんだろうなあ。主流派IRAだったらまだともかくとして、真IRAにとっちゃ政治声明もある意味お飾りという印象がある。北アイルランド第二党シンフェイン(主流派IRAの政治部門)のジェリーアダムズが、「真IRAは英軍兵士を標的にしていると言っているが、今回の事件の目的は、英軍の警戒度をアップさせて英軍をもう一度北アイルランドに呼び戻すことにあるんじゃないか」とかいう意味のことを言ってたけど、説得力があるといえばある見方だ。真IRAの存在意義は英軍とドンパチやりつづける事にあるわけで、だとすると英軍兵士には北アイルランドにいてもらったほうがいいわけだもんね。
それにしても、今日あらためて認識したのはタイムズの社説の保守さ。今日はたまたま行った店でガーディアンが売り切れていたから、めったに買わないタイムズを買って、まあほかの報道は詳細でよかったんだけど、とにかく社説の論調にちょっとびっくりしましたよ。タイムズはインテリ・中産階級保守って位置づけで、穏健保守あたりだと思ってたんだけど、今日の社説はーこれはー……
http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/leading_article/article5870801.ece
まず出だしから土曜の事件が「英軍兵士がアイルランド系ナショナリストに殺された」ものであることをほのめかしてあって、はい?という感じ。(「英軍兵士がアイルランド系ナショナリストに殺されることなく12年がすぎていたのに」と、直接的には書かないあたりがいやらしい。)「アイルランド系ナショナリスト」って、語義的にはIRAをさすものとして合ってるけど、BBCとかでも慣用的に北アイルランドのカトリック住民全体をさすものとして使われること多いんだよね。紛争当時ならこれでも、まあ、まちがいではなかったのかもしれませんが(主流派IRAが一定程度のカトリック住民の支持をえていたから)、非主流派がほとんど孤立して武装行動を続けてる現在では、ちょっとおかしいというか、カトリック系全体が武装行動を支持しているように意図的にミスリーディングしているのかどうかは知らないが……、
なんかこの後もすごくて、かつて暫定派が長く生き延びたのは近隣住民が彼らをかくまったからだ。なら、今回の犯人がつかまるかどうかも北アイルランドの住民次第じゃないか。とか書いていて、カトリック系住民が真IRAをかくまってんじゃないのーと暗にほのめかす。なら警察や政府にできることはない、平和を求めるんなら北アイルランドの住民たちが変わらなくてはならないんだ、とかいう論調。これもだが、はっきり書かない「ほのめかし」がいやらしい。このレトリック戦ってほんとイギリス書き英語の特徴って気がするが、保守バリバリの論調でやられるとけっこう癪にさわるんだ。うーん。いやあ、だって、非主流派IRAがほとんど孤立してるというのは、ろくに北アイルランド問題にくわしくないわたしでもよく耳にすることだよ……
一般化して説明するとつまり、ある民族集団のなかにごくごく少数の反政府過激派がいたとして、この社説は、そういう過激派がいるのは民族集団全体が悪いんだと。民族集団全体が、どうせやつらとつながってて、やつらをかくまってるんだろと。そういうことを言っているわけではないでしょうか……、
これ事件が起こった文脈が違えばレイシスト(人種差別主義者)呼ばわりされて不思議ないと思うんだけどなあ。ちょっとこれはひどいぜタイムズさん。
土曜日の事件に関して言えば、英兵が北アイルランドで殺されたのは12年ぶりだという話で、ショッキングなニュースとして日曜はUK中のニュースがこれでもちきりだったようだ。昨日まったくニュースをチェックしなかったわたしは今日のラジオニュースで知りました。紛争が激しかったころに英軍とドンパチやっていた主流派の暫定派IRAの元幹部(マーティン・マクギネス、現在は北アイルランドの副首相)までもが、今回の非主流派の行動を非難し、UK首相のゴードンブラウンも何があろうと和平の邪魔はさせない!と意気込み、ガーディアンは事件が起こった街を取材して(http://www.guardian.co.uk/uk/2009/mar/09/real-ira-murders-massereene-soldiers)、プロテスタント住民はもちろん(歴史的に英軍への反感が強い)カトリック住民も兵士の死を心から悼んでますよ!とか強調して、政府もメディアも「社会がまっぷたつにわかれていがみあってた時代はもう終わったんです」というメッセージを出そうとしていた矢先に、今晩の事件。まだ犯行声明は出ていないみたいだけど、また真IRAなのかなあ。
土曜日の事件では、兵舎にピザを届けに来た二人の配達ピザ屋さん(ポーランドからの労働移民)も兵士と一緒にまとめて撃たれて、うち一人は瀕死だということなんですが、真IRAはこれを「英軍にピザを配達したということは英軍の協力者だから正当な標的だ」という位置づけにするんかいな。これは昔、紛争をやってたころ、主流派IRAが兵士と警察以外を殺すたびにそれを正当化してた常套句だが。
しかしなあー、現在のUK内においては、しかもイギリスアイルランドうんぬん以外の多様な文化・民族性の問題が(皮肉にも)他のUKに比べて圧倒的に認知されてない北アイルランドにおいては、民族的にアイルランド系だけどUK国籍が取得可能(たしか北アイルランドの人はアイルランド国籍とUK国籍とどっちかを選べたはず)な人と、旧東ヨーロッパからの労働移民と、どっちがグローバルな権力構造に搾取されてる存在かというと、かなり微妙じゃないか。打倒植民地支配と反帝国主義を名目に武力活動をするんだったら、現在進行形で進んでる新しい帝国主義のかたちに意識的になったりはしないものなのか。しないんだろうなあ。主流派IRAだったらまだともかくとして、真IRAにとっちゃ政治声明もある意味お飾りという印象がある。北アイルランド第二党シンフェイン(主流派IRAの政治部門)のジェリーアダムズが、「真IRAは英軍兵士を標的にしていると言っているが、今回の事件の目的は、英軍の警戒度をアップさせて英軍をもう一度北アイルランドに呼び戻すことにあるんじゃないか」とかいう意味のことを言ってたけど、説得力があるといえばある見方だ。真IRAの存在意義は英軍とドンパチやりつづける事にあるわけで、だとすると英軍兵士には北アイルランドにいてもらったほうがいいわけだもんね。
それにしても、今日あらためて認識したのはタイムズの社説の保守さ。今日はたまたま行った店でガーディアンが売り切れていたから、めったに買わないタイムズを買って、まあほかの報道は詳細でよかったんだけど、とにかく社説の論調にちょっとびっくりしましたよ。タイムズはインテリ・中産階級保守って位置づけで、穏健保守あたりだと思ってたんだけど、今日の社説はーこれはー……
http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/leading_article/article5870801.ece
まず出だしから土曜の事件が「英軍兵士がアイルランド系ナショナリストに殺された」ものであることをほのめかしてあって、はい?という感じ。(「英軍兵士がアイルランド系ナショナリストに殺されることなく12年がすぎていたのに」と、直接的には書かないあたりがいやらしい。)「アイルランド系ナショナリスト」って、語義的にはIRAをさすものとして合ってるけど、BBCとかでも慣用的に北アイルランドのカトリック住民全体をさすものとして使われること多いんだよね。紛争当時ならこれでも、まあ、まちがいではなかったのかもしれませんが(主流派IRAが一定程度のカトリック住民の支持をえていたから)、非主流派がほとんど孤立して武装行動を続けてる現在では、ちょっとおかしいというか、カトリック系全体が武装行動を支持しているように意図的にミスリーディングしているのかどうかは知らないが……、
なんかこの後もすごくて、かつて暫定派が長く生き延びたのは近隣住民が彼らをかくまったからだ。なら、今回の犯人がつかまるかどうかも北アイルランドの住民次第じゃないか。とか書いていて、カトリック系住民が真IRAをかくまってんじゃないのーと暗にほのめかす。なら警察や政府にできることはない、平和を求めるんなら北アイルランドの住民たちが変わらなくてはならないんだ、とかいう論調。これもだが、はっきり書かない「ほのめかし」がいやらしい。このレトリック戦ってほんとイギリス書き英語の特徴って気がするが、保守バリバリの論調でやられるとけっこう癪にさわるんだ。うーん。いやあ、だって、非主流派IRAがほとんど孤立してるというのは、ろくに北アイルランド問題にくわしくないわたしでもよく耳にすることだよ……
一般化して説明するとつまり、ある民族集団のなかにごくごく少数の反政府過激派がいたとして、この社説は、そういう過激派がいるのは民族集団全体が悪いんだと。民族集団全体が、どうせやつらとつながってて、やつらをかくまってるんだろと。そういうことを言っているわけではないでしょうか……、
これ事件が起こった文脈が違えばレイシスト(人種差別主義者)呼ばわりされて不思議ないと思うんだけどなあ。ちょっとこれはひどいぜタイムズさん。
PR
Posted by まめやもり - mameyamori - 2009.02.28,Sat
スラムドッグミリオネアは今上映してるんですが、ちょっと今いろいろドタバタ立て込んでて……見逃したくないんですが、なんとか頼む、3月20日以降までやってくれないものか。アカデミー賞総ナメ(とまではいかないけど)したってことで、三ヶ月くらい上映してくれよーオイー
もう一本はローレン・カンテの『クラス』。(リンクはユーチューブの予告編、英語字幕。)去年のカンヌでパルムドールをとった作品。たしかアカデミー賞にも外国語映画賞かなんかでノミネートされてたはず。トレイラーはちょっとインパクトに欠ける気もしますが。
ローレン・カンテは以前にレビューを書いた『Heading South』でちょっと注目してた監督なので、昨年の受賞は おおー! という感じだったんだよね。だから絶対見たいのだが こっちは単館系だからせいぜい二週間しか上映しないんだよなあ。
うおーどうしよう
もう一本はローレン・カンテの『クラス』。(リンクはユーチューブの予告編、英語字幕。)去年のカンヌでパルムドールをとった作品。たしかアカデミー賞にも外国語映画賞かなんかでノミネートされてたはず。トレイラーはちょっとインパクトに欠ける気もしますが。
ローレン・カンテは以前にレビューを書いた『Heading South』でちょっと注目してた監督なので、昨年の受賞は おおー! という感じだったんだよね。だから絶対見たいのだが こっちは単館系だからせいぜい二週間しか上映しないんだよなあ。
うおーどうしよう
Posted by まめやもり - mameyamori - 2009.02.23,Mon
タイトルは間違い。
正しくはEU圏外からの移民について規制を強める方針についてのニュースでした。
読み返したら素で激しく読み間違えていたので訂正します。(23.March.2009)
いやだけど、「イギリス外で生まれた労働移民」の話をしてて、「イギリス人にまず求人広告を出す決まり」の話をしてて、「EU内からの移民に対する規制はこれまで無かった」という話をしていたのに、じっさいの規制はnon-EUの話なのね。文脈の変化についてってませんでした(と、みっともなく言い訳する)。
---
おわーこれはけっこうなバリアでは……。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7904393.stm
UK内務大臣のスミスがEU内からの移民労働者についても高い受け入れ基準を設ける方針を公表。もともとEU外からの労働者にはたっかいバリアがあって、ビザ取るのはそんなにたやすくないんですが、それを「イギリスのシチズンシップ(国籍のようなもの)をもたない人間」全部に広げるということかな。 4月から導入される実際の規制はnon-EU workersなので、EU外からの人間に対するものでした。失敬失敬。
そしてその受け入れ基準はというと、
とのことなので、修士号を持ってて、以前の収入がUKポンドに換算して2万ポンド/年、とのことですよ。この2万ポンド/年というのは、現在の超円高状態だと300万円/年、UKの生活感覚に換算すると400万円/年の収入って感じでしょうか。たしかに修士を持ってる20台の人とかは大体このくらいの年収で働いている気がします。だけどUK以外のヨーロッパ、とくにこの規定が想定している東欧や南欧の国だとかなりの高収入になるのでは? UKって物価が高いって有名だし……
うーん「中産階級以外はうちの国に来るな」というメッセージを数字化・制度化するとこうなる、という感じでしょうか。イカニモだわ、、、
経済危機の勃発以来、全体的に社会が移民問題についてピリピリしてる気がします。ラジオの討論番組でもよく話題になってるわー。もともと非EU圏からの移民は高い規制があるので、最近は矛先が、2000年代になって移民が増加している東欧圏に向いてる感じです。
今回の方針はわたしたちのようにアジア圏のパスポートをもつ人間には直接の影響はありませんが、全体的なピリピリ度が感じられるようで、ウーンというところですね。 でなくて、もろにわれわれEU外からの人間についての話でした。現在は、イギリスで学位を取った人間には2年間の仕事探し猶予ビザ(公式な名前なのかはわからないが、post-study visaと呼ばれる)が与えられるようになったのですが、まず仕事を見つけてからでないと、移住は難しくなったという感じでしょうか。
正しくはEU圏外からの移民について規制を強める方針についてのニュースでした。
読み返したら素で激しく読み間違えていたので訂正します。(23.March.2009)
いやだけど、「イギリス外で生まれた労働移民」の話をしてて、「イギリス人にまず求人広告を出す決まり」の話をしてて、「EU内からの移民に対する規制はこれまで無かった」という話をしていたのに、じっさいの規制はnon-EUの話なのね。文脈の変化についてってませんでした(と、みっともなく言い訳する)。
---
おわーこれはけっこうなバリアでは……。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7904393.stm
そしてその受け入れ基準はというと、
From April, non-EU workers wanting to come to Britain without securing a job beforehand must have a master's degree - rather than a bachelor's degree, as currently - and a previous salary equivalent to at least £20,000.
とのことなので、修士号を持ってて、以前の収入がUKポンドに換算して2万ポンド/年、とのことですよ。この2万ポンド/年というのは、現在の超円高状態だと300万円/年、UKの生活感覚に換算すると400万円/年の収入って感じでしょうか。たしかに修士を持ってる20台の人とかは大体このくらいの年収で働いている気がします。
うーん「中産階級以外はうちの国に来るな」というメッセージを数字化・制度化するとこうなる、という感じでしょうか。イカニモだわ、、、
経済危機の勃発以来、全体的に社会が移民問題についてピリピリしてる気がします。ラジオの討論番組でもよく話題になってるわー。もともと非EU圏からの移民は高い規制があるので、最近は矛先が、2000年代になって移民が増加している東欧圏に向いてる感じです。
CALENDER
CATEGORIES
SEARCH THIS BLOG
RECENT ENTRIES
(11/03)
(10/31)
(04/07)
(12/25)
(12/07)
(12/01)
(11/03)
(06/09)
(04/24)
(03/31)
RECENT COMMENTS
Since_12Apr07
ABOUT ME
HN:
まめやもり - mameyamori
怠け者のちいさなやもりですが色々ぶつぶつ言うのは好きなようです。
時折超つたない英語を喋りますが修行中なのでどうかお許しください。
A tiny lazy gecko (=yamori) always mumbling something
Please excuse my poor English -- I am still under training
時折超つたない英語を喋りますが修行中なのでどうかお許しください。
A tiny lazy gecko (=yamori) always mumbling something
Please excuse my poor English -- I am still under training
JUMPS
TRACKBACKS
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
Powered by "Samurai Factory"